七十二候・蚯蚓出<みみずいずる>

蚯蚓出

冬眠から覚めたみみずが土の上に這い出してくる頃の七十二候。

どちらかというと苦手な人も多いミミズは、実は「自然の鍬」とも呼ばれる田畑の味方です。
土の中に縦横無尽にトンネルを掘り、土を食べては中の微生物や有機物を消化吸収し、栄養たっぷりの粒状の糞を排出します。植物の生育に最適な土壌づくりに大いに貢献することから、農業では益虫とされ、土壌改良に利用されているそうです。

このことを最初に学術的に研究したのはチャールズ・ダーウィンで、彼は進化論の中で「植物が生えている土はミミズの体を何度も通ってきている」と述べています。

この尊さを知ると、アスファルトの上で干からびている姿がとても悲しく、土に蓋をしてしまったことに申し訳なくなります。

ミミズは中医学や薬膳では「地竜」という名前で生薬として使われます。
現在では高熱や喘息の薬に使われるミミズですが、11世紀の文献には解熱作用、鎮痛・鎮痙作用、利尿作用、血圧降下作用、糖尿病の改善作用、血行促進作用、消炎作用、殺菌作用、中風(脳出血)、胸痺(狭心症・心筋梗塞)の妙薬として紹介されていて、万能薬と信じられていたことがわかります。


薔薇緑茶と薔薇の琥珀糖

薔薇

七十二候は「蚯蚓出」ですが、地上は薔薇が花盛り。

光が苦手なみみずですが、うっかり地上に出てきたときには、土をせっせと耕してくれたご褒美に、薔薇の香りに癒されてほしいと願います。

「薔薇の香り」と一口に言っても、香りには系統があるそうです。
濃厚で華麗な香り「ダマスク」、爽やかで軽やかな「ティー」、さらにフルーティ、スパイスなど種によってさまざまな香りのバリエーションがあるそうです。
バラ園に行くと、花の美しさを愛でるだけではなく、香りの匂い比べにも夢中になってしまいますね。

薬膳で活躍する「玫瑰花(まいかいか)」は薔薇の一種・ハマナスの花を乾燥したもの。少しスパイシーな香りで滞った気を動かしてくれます。
暑くなる季節には、熱を冷ましビタミンCも豊富な緑茶に加えてもまた素敵。紅茶のローズティーとは違った味わいを楽しんでみてください。

緑茶

中国では、農業、医薬、火、商売、易の神として今も信仰されている神農炎帝(紀元前2740年頃に実在)に発見されたという「茶」。
あまりにも身近な「お茶」ですが、その神農のエピソードをご存知ですか?

神農は、まだ毒も薬も見分けがつかなかった太古に、自らが自然界の目に入るものを端から口にして調べ、毒と薬を分類したとされています。
ある日、1日で72もの毒に当たって苦しんでいた神農の口に、茶の木の葉から雫が落ちました。
これを口にした途端、体内の毒が消え体調が回復したことから、茶の薬効が発見されたのです。

神農が選んだ365種の薬物は中国最古の薬学書「神農本草経」にまとめられ、これは現代の中医学や漢方学、薬膳の基本となっています。
同じく神農が著した「神農食経」には「茶葉は利尿効果、痰と熱を取り除き、口の渇きを癒し、飲むと眠気が覚め力を増え、心情が愉快になる」と書かれています。

お茶を飲んでリフレッシュいたしましょう。

薬膳メモ

薔薇(玫瑰花・まいかいか)温/甘肝脾/疏肝解鬱、活血止痛
茶葉(ちゃよう)涼/苦甘心肺胃/清熱瀉火、清利明目、利尿解毒
ミミズ(地竜・じりゅう)寒/鹹肝脾膀胱/平肝熄風、清熱定驚、清肺平喘