七十二候・葭始生<あしはじめてしょうず>

あしはじめてしょうず

水辺の葦(あし)が芽吹き始める頃の七十二候。

古事記・日本書紀では日本のことを「葦原中国(あしはらのなかつくに)」「豊葦原瑞穂国(とよあしはらのみずほのくに)」と称しています。
これは、天上の高天原から見て、地下の黄泉の国との中間にあることから名付けられたもので、「葦原」とは葦の葉がざわざわと無気味にさわぐ、混沌とした無秩序の世界のことでもあります。そんな世界に神々が降り立ち、新しい人間の国が作られていったとされるのが私たちの国の神話です。

植物の葦は、長いものなら5mほども成長し、中空で軽い性質があるので、屋根や船の材料になったり燃料や楽器にしたりと、日本だけではなく世界中で、人間の暮らしに欠かせない植物でした。紙の原型のパピルスも葦の仲間です。
また、水辺の鳥や生き物の住処となって命を育む植物でもあります。

この葦が一斉に芽吹く季節。若い芽は、「葦牙(あしかび)」といわれ、春の季語です。牙のように尖っていることから、葦の角(あしのつの)、葦の錐(あしのきり)とも呼ばれることもあります。

褐返(かちかえし)

暗い夜の水辺に光る水と水草の若い芽の配色をイメージしました。
夜の川の色、「褐返(かちかえし)」は一旦染めた布をさらに藍で染めた深みのある紺色です。
店先の暖簾などによく使われる日本の伝統色です。
ここに生える瑞々しい水草の色は「萌黄」と「若菜色」。
夜の水辺に、小さな生き物が息づく、ときどき水音が跳ねる、そんな春の夜を思い浮かべました。

design note

#203744(褐返 かちかえし)
#ebf6f7(藍白 あいじろ)
#aacf53(萌黄 もえぎ)
#d8e698(若菜色 わかないろ)

源流明朝SB
筑紫新聞明朝
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