七十二候・腐草為螢<くされたるくさほたるとなる>

くされたるくさほたるとなる

水辺や湿地で蛍が舞い、飛び交う頃の七十二候。

暑さで蒸れて腐った草や葉から蛍が生まれる、と昔は信じられていたそうです。

綺麗な水と条件が整った環境でだけ育つことのできる蛍。蛍舞う風景は、都会に住む人にとっては簡単に出会うことのできない幻想に近いものかもしれません。

私は大人になるまで実物を見たことがなく、古田足日さんの児童文学「大きい1年生と小さな2年生」で「ホタルブクロ」を知り、花に蛍を入れる遊びに憧れたものです。初めて群れる蛍の蛍柱を見たときは、異界を覗いたように思いました。
古来から日本では蛍の人気は高く、日本書紀や古事記にも記述があるそうです。古代から現代まで、文学や絵画、音楽のテーマになることも多く、人気の高さがよくわかります。

蛍は世界中に2000種以上生息している昆虫ですが、ほとんどが陸生で、水の中で育つ蛍は10種しか確認されていません。そのうちの3種が日本で見られる「ゲンジボタル」「ヘイケボタル」「クメジマボタル」です。
一年中蛍鑑賞ができることで知られている台湾でも、そのほとんどは陸生の蛍なのだそうです。

濡羽色 ぬればいろ

蛍がふわっと飛ぶ夜の闇を「黒」より深く生命感あふれる「濡羽色」を選びました。
カラスの羽のような艶やかな黒は、女性の美しい髪の例えとして用いられます。
カラスの羽は、よく見ると青や紫、緑などの光沢を帯び、その色のからまり合いが艶となって目に映るのです。
数多の命を抱く艶やかな闇の中で、生まれ、育ち、光を放つ蛍の輝線を配色にイメージしました。

design note

#000b00(濡羽色 ぬればいろ)
#2b2b2b(黒 くろ)
#474a4d(藍墨茶 あいすみちゃ)
#d7cf3a(鶸色 ひわいろ)

源流明朝SB
筑紫新聞明朝
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