七十二候・蚕起食桑<かいこおきてくわをはむ>

かいこおきてくわをはむ

蚕(カイコ)が桑の葉を盛んに食べる頃の七十二候。

昭和初期まで日本の主力輸出商品だった絹を生み出す蚕。繭を作る前の1週間、蚕は寝ずに桑の葉を食べ続けるため、この時期の農家は大忙しだったそうです。小学校の頃、教室で飼っていた蚕の、葉を食べる音の大きさと勢いに驚いたものです。静かになったと思うと繭になっている、それがとても不思議でした。

養蚕は5000年以上の歴史を持つと言われています。
蚕は、ミツバチと並んで家畜として人間のために働く昆虫の代表格ですが、どうやって家畜化されていったかなど養蚕の歴史はまだ解明されていないこともあるのだとか。

繭は一本の絹糸でできあがっていて、これをほぐしてよりあげたものが絹糸となります。
古事記の時代から日本の産業を支えた蚕を祀った神社は蚕影神社(こかげじんじゃ)といい全国にありますが、総本社は茨城県にあります。
天竺の金色姫は、桑で作った船で海に流されたところ茨城県の海岸に流れ着き、そこから養蚕が日本に伝来した、という伝説に基づき、信仰の対象となりました。

絹糸を織り上げたシルクの肌触りのひんやりとした蚕。
神秘的な美しさを持つシルクが東西の貿易を開き、ユーラシア大陸の歴史を作り上げました。
小さな虫の不思議な力に魅了される七十二候です。

桑の実色 くわのみいろ

桑は5月から6月にかけてたくさんの実をつけます。熟した桑の実は深い紫色で、ラズベリーのように小さな粒が集まって一つの実になります。
甘酸っぱい桑の実は人間にも鳥にも人気の果実で、この時期野鳥の落とし物は濃い紫色をしていたりします。
桑の実の英名はマルベリー。そのままでもジャムにしても、果実酒にしても美しい色が映える出来栄えになります。

桑の木は、根の皮を桑白皮(そうはくひ)、葉は桑葉(そうよう)、枝は桑枝(そうし)、果実は椹(たん)または桑椹(そうじん)、もしくは桑椹子(そうしんし)という生薬として利用されるほど薬としての価値が高い植物です。
桑の実「桑椹」は体を潤し血を作る働きがあるとされ、貧血の人の薬膳でよく使われます。
かすみ目にも良いとされているので、手に入った時はジャムにして長く楽しみたいものです。

design note

#55295b(桑の実色 くわのみいろ)
#e7e7eb(紫水晶 むらさきすいしょう)
#ebd842(金糸雀色 かなりあいろ)
#7ebeab(青竹色 あおたけいろ)

源流明朝SB
筑紫新聞明朝
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