七十二候・乃東生<なつかれくさしょうず>

なつかれくさしょうず

「乃東・なつかれくさ」が生え始める頃の七十二候。
「なつかれくさ」は、「夏枯草・カゴソウ」と呼ばれる生薬で、古くから薬草として親しまれてきたシソ科植物ウツボグサのことです。夏に花が終わった穂が茶色く枯れたように見えることからこの名がつきました。
「ウツボグサ」のうつぼは、どう猛な魚ではなく、武士が弓矢を入れて背中に背負った道具の靭(うつぼ)のことです。花穂の形や花穂につく小花の形が似ていることからこう呼ばれるようになったそうです。
消炎作用などがあるとされ、中国では暑気払いにお茶の代わりに飲むこともあります。世界各地に見られる草で、ヨーロッパでは人気のあるハーブとして”self-heal”と呼ばれるのだそうです。

冬至の頃の芽吹き

どんどん寒くなるこの季節に、枯葉の隙間から新しい草の芽吹きを見つけ、驚くことがあります。毎日犬を散歩させる公園の地面には1週間ほど前からハコベが芽を出し、あれよあれよという勢いで茂りはじめました。こんなに寒く、霜も降りる地面なのに草の新緑で地面が覆われていく風景は心を明るくしてくれます。

冬至は昼が一番短い日ではありますが、日の入りの時間が早いわけではありません。日の入りが一番早いのは冬至の半月前の12月上旬ごろで、実際はもう少しずつ日が延びているのです。この日照時間の変化を感じ取って地上に芽を出す植物の生命力とアンテナは、人間にはとてもかなうものではありません。
「乃東生<なつかれくさしょうず>」という七十二候には、この自然への畏敬の念が込められているように思います。

芽吹きの色

地の色は「薄萌葱 (うすもえぎ)」という黄と青の中間色の少し白っぽい色です。
「萌黄色」は春先に萌え出る若葉のような黄緑色ですが、厳しい寒さの中におずおずと顔を出し始めた若草には、この白味がかった緑がふさわしいように思います。
もう一段薄い緑の色は「白緑(びゃくろく)」です。

お正月のお菓子にも使いたい、品のよい配色ですね。

design note

#badcad(薄萌葱 うすもえぎ)
#d6e9ca(白緑 びゃくろく)
#638c80
#ffffff

源流明朝SB
筑紫新聞明朝
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