写真をリメイクするということ

「写真」て何でしょう?

歌詞の中に、またドラマや映画の中で、「写真」という言葉や、写真を手に取るシーンを見かけることがよくあります。
いちいち説明しなくても、写真には過去のできごとや人物や風景が写っていて、写真を撮る理由があったこと、その写真を見ている人と何らかの関係があって、写真がそれらに対する思いを想起させていることが容易に伝わってきて、そのイメージを共通語として受け取ることができるからです。
そのイメージはたいていがエモーショナルで、甘かったり切なかったりする感情と連動しています。過去の誰かや自分へ思い、懐かしさ、悔しさ、愛おしさ。もう二度と会えないその時へ思いを馳せる。

「写真」は「思い出」と同義語かもしれません。シャッターを切るときには「この瞬間を残そう、残したい」という思いが必ずあるからかもしれませんね。

写真が感情に訴えるもの、心の支えになるものだということは世界共通の認識としてあって 写真の価値を知らない人はいないと思います。

ところが、モノとしての写真となると、持っている意味と裏腹に、ないがしろにされていることが多いのです。
子供の頃の写真や、両親の若い頃の写真が収まった古いアルバムが実家の押入れ深くに放置されていないでしょうか。
箱に入った5冊組の差し込むタイプのアルバムが本棚を占拠しているのに、意識もされない風景の一部になってはいないでしょうか。
何千枚も撮ったはずのデジカメのカードが、引き出しの中で行方不明になってはいないでしょうか。
古いケータイの写真は?スマホの中の写真は?
何万枚もあっても撮ったことも忘れている写真がほとんどではないでしょうか。

「写真」という言葉の持つ抽象的な意味と、現実の形のギャップが大きすぎるのが「写真」なのです。

家の写真が無秩序に放置されているのは誰のせいでもない

心の支えがほしいときに、すぐにほしい言葉をかけてくれる過去の情景が手に取れればいいのに。
そうしたら救われるのに。

そんなふうに私が思うのは、自分の過去の写真との距離をぐんと縮めて必要なときに手に取れるような形にした経験があるからです。
昔の写真がどれだけ心を支えてくれるものなのか、は、「リメイクの実例」をお読みいただくとして、今、写真をすぐに手に取ることができない状況になっていることが誰のせいでもないことをここではお話ししたいと思います。

ご存知のように、かつて写真はフイルムのカメラで撮るものでした。フイルムは現像してプリントしなければ見ることができなかったので、写真を撮った枚数だけプリント写真ができるのが普通でした。
1990年代にデジカメが普及してからは、写真は撮ったらすぐに画面で見られるようになり、データとして数字に置き換えられて保存されるようになりました。すぐに見られる代わりに、それをあとで見る機会はどんどん減りました。SNSで写真を共有する文化が生まれる反面、個人の写真は無造作にクラウドに溜まっていくだけです。
あとで見ようにも量が多すぎて振り返ることも難しくなっています。

昭和の時代、一冊のアルバムを囲んで家族が思い出を語りあった風景は、ファンタジーのように思えるかもしれません。それこそ映画やドラマの中でしか見かけない風景になりつつあります。

ただ、これは人が利便性を求めて進化してきた過程なので、嘆く必要はありません。
「写真を撮る→写真屋さんにプリントにしてもらう」常識が、いつの間にか「データをクラウド上で自己管理する、自己責任でバックアップする」ように変化していても、私たちは技術の進歩に振り回されているだけなので、自分を責める必要はないのです。

写真とのちょうどいい距離

もし、写真が本来の「大切な過去の瞬間を写し取ったもの」の役目を果たしていないなら、それは写真の形が時代やライフスタイルに合ったものになっていないからです。

高価な着物や宝石がタンスの肥やしになるのは、「着ることができない」「着ていく、つけていくところがない」「デザインが好みではない、流行遅れで今の時代にそぐわない」などの理由からです。
現代のライフスタイルに合うように形を変えれば、祖母や母から受け継いだ着物やジュエリーを身近に使うことができるように、写真も形を変えればいいのです。

写真は、食器や普段着のように、いつも日常になくてはならない、というものではありません。
必要なときにすぐに取り出せるような距離感がちょうどいいものです。
見たいときに押入れの中を捜索したり、実家に帰って使われなくなった部屋の中をこわごわひっくり返したりするようでは、その距離は遠すぎます。
見て、心に刺さる、心を支えるタイミングを逃してしまいます。

すぐに出せる、ありかを把握している、なくならないように保管できていることが大切なのだと思います。

写真をリメイクするということ

「リメイク」=形を変える、作り変える、生まれ変わらせること。

今のライフスタイルに合っていないものは形を変えて手の届く距離に置きましょう。
写真が本来の役目を果たせるように、リメイクしていきましょう。

写真のリメイクにはたくさんの方法があります。
写真を撮ったり見たりする技術は急速に変化してきたので、どこの段階がその人の日常として定着したかは、ひとりひとり異なります。
また現在、どんな環境で過ごしているのかによってもリメイクの形が変わります。

<写真の状態、例えば>
・古いアルバムが何冊もある
・プリント写真がDPEショップの袋のままや、缶に入れて保管されている
・デジカメのデータの入ったSDカードが何枚もある(中身がわからない)
・昔使っていたパソコンに入ったまま

<現在の環境、例えば>
・高齢になり荷物は最小限にしたい
・パソコンやスマホで写真を見るので紙のアルバムはいらない
・スマホなどの機器は苦手

などなど。
リメイクする、ということはその人が使いやすい、いつでも見られるという本来の目的にかなった形に作り変えることなので、ひとりひとりに合わせた形を模索することから始まります。

ベストな方法が見つかるまで、一緒に写真との距離を縮めていきましょう。
昭和のあの日のように、一冊のアルバムを囲むひとときを過ごせるように。
私たち青い鳥書房が、そのお手伝いをいたします。

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